樺細工を始めたきっかけは何ですか?
父が樺細工の職人でしたので、小さい頃から父の作業場が遊び場でした。 樺細工づくりの手伝いもしていたため、高校生のときには樺細工の職人になることを心に決めていました。実際、高校を卒業してすぐに父に弟子入りし、父と一緒に樺細工の仕事を始めました。
今まで大変なことはありましたか?
私が仕事を始めた時期はバブルの終わりで、日本の景気が悪くなってきたときでした。状況を理解していた父からは、樺細工の道に進むことを反対されていましたが、子供の頃から父の姿を見て育ち、職人になることをずっと夢見てきた自分にとって、いまさら他の仕事をやるなんて考えられませんでした。
今になって思えば、当時の自分は「無知だったな」と感じます。一生懸命いいものを作っても、なかなか思うように売れず、苦しい時期もありました。
苦しい状況をどうやって乗り越えたのですか?
とにかくお客様1人、1人に満足していただけるものづくりを心がけました。
モノが売れない時代にも関わらず、高価な樺細工の商品に目をとめて下さるお客様はプロの目を持っています。本当にいいものを探して、さまざまな展示会や即売会に足を運ばれるため、良いものを見極める目が養われているのです。
そのようなお客様を満足させるために、材料の仕込みから一切妥協せず、一つ一つの工程をシビアに取り組みました。
結果的にリピートや口コミで購入していただける機会も増え、自分の技術力を向上させることもできたと感じています。
今後はどのようなものづくりをしていきますか?
お客様1人、1人に満足していただくという、基本的な姿勢は変わりません。
ただ1つ、樺細工産業全体として、後継者不足という課題があります。
樺細工は完成まで時間がかかりますし、作業にも派手さはまったくありません。職人になったからといって、すぐに売れるわけでもありません。正直厳しい仕事です。
ですが、誰かが技術を受け継ぎ、継承していかなければ、衰退し、いずれ樺細工自体がなくなってしまいます。
今後は茶筒だけではなく、新商品の開発にも積極的にチャレンジして、若い力で樺細工を盛り上げていきたいと考えています。
経 歴
昭和50年 | 角館町に出生 |
平成 6年 | 樺細工職人の荒川慶一に師事 |
平成20年 | 伝統工芸士に認定される |
主な受賞歴
平成 7年 | 角館町樺細工伝統工芸展 新人賞 |
平成 8年 | 上記工芸展 角館町角館民芸協同組合理事長賞 |
平成 9年 | 上記工芸展 角館町伝統的工芸品産業振興協会長賞 |
平成11年 | 上記工芸展 角館町秋田県知事賞 |
平成12年 | 上記工芸展 角館町長賞 ※以降、毎年受賞 |
平成19年 | 第32回全国伝統的 伝統工芸品コンクール 入選 |